一般財団法人 日本建築センター The Building Center of Japan

既存建築物技術審査部(既存建築物関連の技術評価・調査)【60周年記念ページ】

 ■事業の状況

 当財団では、建築ストックの長期有効活用を支援するため、体制の整備と業務の拡充に取り組んできました。平成25 (2013) 年当時は、認証部として 建設技術審査証明耐震診断評定CASBEE評価認証、新建築技術認定等を実施していました。

 その後、平成28 (2016) 年に 既存建築物の遵法性調査」改修計画の法適合性審査・検査」 を開始しました。平成26 (2014) 年か確認検査部で実施していた 「検査済証のない建築物のガイドライン調査」 を平成29 (2017) 年度末に認証部に移管しました。

   令和元 (2019) 年には部署名を「認証部」から既存建築物技術審査部へと変更するとともに、既存建築物に対する調査・鑑定業務を行うため、一級建築士事務所登録を行い、
  同時期に鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価エンジニアリング・レポート業務を開始しました。

 さらに、平成10(1998) 年改正前の 建築基準法第38条 (以下、旧法第38条) に基づく大臣認定建築物について、現行法上の位置づけ、改修等における法の適用関係やその判断主体等を整理し、令和5 (2023) 年から、旧法第38条認定建築物の改修等における法手続きや法適合性確保に関する業務も開始しました。

既存建築物技術審査部の事業の変遷

既存建築物技術審査部の事業の変遷

   令和6 (2024) 年5月には、これまでの業務から得られた知見を書籍にまとめ、既存建築物の法適合調査ガイド-円滑な改修のためのA to Z-を出版するとともに、セミナーの開催既存建築物関連情報のメール配信も実施しました。

 このように、既存建築物技術審査部は、既存建築物関連の技術サービスを総合的に展開するとともに、建築確認性能評価等の業務への橋渡しを行うなど、既存建築物の改修等における総合窓口としての機能も担っています。 

 ■内容と特徴

既存建築物の各種調査等事業

① 適法性調査
   既存建築物の改修等における建築基準関係法令への適合性について調査・審査等を行う業務です。具体的に
   は、「検査済証のない建築物のガイドライン調査」「現況の遵法性調査」「改修計画の法適合性審査・検査」
   及び「旧法第38条認定建築物の改修等における法手続きや法適合性確保に関する業務」を実施しています。

② 耐震診断評定
  耐震診断や耐震改修計画に対し、学識者等で構成される委員会で耐震性を評価する業務です。当財団では、
  技術的難度が高い免震・制振技術を用いた建築物、木造やレンガ造による文化財 (建造物) などにも対応でき
  る審査体制を整えています。


③ 鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価
  外壁等から採取したコンクリートのコア供試体に対して中性化の試験等を実施し、その結果から中性化が
  鉄
筋に到達する年数を予測し、学識者等で構成される委員会での審議を経て構造躯体の耐用年数を評価する
  業務です。評価結果は、金融機関の融資判断、建替えや長期活用の判断、工学的に合理的な改修計画の策定
  などに活用されています。

④ エンジニアリング・レポート
  既存建築物の遵法性や劣化状況、建物環境・土壌汚染・地震リスク等について法的・技術的見地から多面
    的に調査し、不動産の評価や収益性に影響を及ぼすリスクを明らかにする業務です。調査結果は、不動産
  の証券化等における鑑定評価、一般の不動産売買、資産査定などに活用されています。

⑤ 任意調査等(その他の技術評価)
  上記①から④に該当しない既存建築物に関する任意の調査・審査・検査等について、お客様の要望に応じて
  行う業務です。なお、高度な工学的判断を要する場合は、学識者等で構成される委員会を設置し実施してい
    ます。

建設技術審査証明事業

   当財団は、土木建築関係の評価機関により構成されている「建設技術審査証明協議会」の会員として、建設技術審査証明事業(建築技術)を実施しています。本事業は、新技術を対象に、その技術的特徴や優位性について学識者等で構成される委員会で技術審査を行い、これを証明し普及活動を行うものとなっています。

 新技術の開発趣旨に照らしお客様が設定する「開発目標」を審査項目とする比較的自由度の高い審査事業です。
主な技術分野としては、既存建築物の吹付け石綿(アスベスト
)粉じん飛散防止処理等、防水、防食、外壁補修、
排水管更生、地盤・基礎関連技術等があります。

「職員のこぼれ話」~ 正反対の結果 !? ~

   昨年のある日、自治体の方からの次のような焦った電話相談がありました。

  「地元のコンサルタントに委託して、ある学校の劣化調査をしたところ、『コンクリートの中性化がかなり進行しているので、残存耐用年数はほとんどないと報告を受けた。建て替えとなると、数十億必要だ。』と言われ困惑している。どうにかならないか?」

  これに対し当方から、鉄筋コンクリート造建築物の耐用年数評価のご説明をしたところ、早速、評価依頼をいただくことになりました。改めて当財団にて調査した結果、その学校は100年超の耐用年数があると評価されました。まさに「正反対」の結果となり、自治体の方は胸をなでおろされたことは言うまでもありません。

 そもそも鉄筋コンクリートは、屋内側の中性化は屋外側より早いが、コンクリートが乾燥しているため鉄筋はほとんど錆びません。一方、雨掛かりがある屋外側は中性化が鉄筋に達すると鉄筋腐食し、それが進行すると構造耐力が低下していきます。

   こうした事例から、コンクリートの中性化による劣化機構については、まだ十分に理解が行き渡っていないケースがあることを知り、新たな気づきがありました。今後のストックの長期活用を見据え、知識の共有や認識の向上に努めたいと考えています。

耐用年数評価案件(200棟)の概要

耐用年数評価案件(200棟)の概要(2019.5~2024.3)

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